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  • 2007.09.25 Tuesday
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 赤と黒の芸術「楽茶碗」

11/12(日)まで東京・日本橋、三越本店隣の三井記念美術館で。03―5777―8600

    ◇

 400年余にわたって茶の湯の茶碗を作り続けて来た、京都・樂家歴代の86作品を一堂に集めた、開館一周年記念の誠に贅沢な展覧会です。第一展示室には、初代長次郎作が13碗。重要文化財の赤楽茶碗 銘「無一物」(高さ8.6cm、口径11.2cm)、それに「一文字」。黒楽茶碗は「ムキ栗」や重文「俊寛」。10月24日(火)からはこれに重文の「大黒」(おおぐろ、高さ8.5cm、口径11.5cm)が加わります。これほどの名碗が揃う機会は、もう2度とないかも知れません。

 長次郎の楽は独特の存在感を備えた、不思議な茶碗です。同じ桃山期の志野や織部、黄瀬戸などが轆轤(ろくろ)で成形され、大窯や登窯で一度に数多く焼かれたのに対して、一碗ごとに手捏(てづく)ねで形作り、丹念に箆(へら)で土を削り落として、胴部の曲面や口縁などを整えています。焼成も室内の小規模な内窯。当時の焼成温度ははっきりしませんが、現在の赤樂で約800度、黒楽は1200度をやや超える程度です。黒楽の場合はフイゴで風を送り込みつつ、ひと窯で1碗ずつ焼くのだそうです。志野や織部が素地の一部を露出させ、自然の土味を意図的に見せているのとは対照的に、長次郎の楽は底部まで隈なく釉が掛かっています。徹頭徹尾自然や偶然を排除し、余分なすべてを削ぎ落とした地点に成立した、赤と黒の静謐な世界。豪放な桃山期の茶碗の対極にある、手の中に底知れぬ宇宙を包み込むやきものではなかろうかと感じました。

 展覧会でガラスケース越しに茶碗を見ただけで、語れるのはここまでです。この先の案内は、樂家15代当主の吉左衞門さん(1949―)に任せましょう。京都・大徳寺の機関誌『紫野29号』(2006年7月刊)に掲載された神波東嶽・宗務総長らとの鼎談で、長次郎の作について「土の感触がそのまま手に伝わってくる。だから実はとても、土っぽい茶碗です」と語っています。歴代に比べて釉薬の層が極端に薄く、赤楽の色も、透けて見える土そのものの色合いなのだそうです。そうであるなら、全面への施釉と人工の極とも言うべき削りを加えつつも、なおかつ自然に近い味わいを伝えているわけで、凄い手腕と言うほかありません。こういう感じ方は、実際に触ってみなければ分からないと思います。

 長次郎に茶碗を作らせたのは、侘び茶の大成者である千利休(1522―91)です。利休の美意識に、長次郎が形を与えたのは間違いないでしょう。展覧会を企画した三井記念美術館の赤沼多佳参事は茶会記の記述などから、天正9(1581)年ごろに「無一物」を始めとする赤楽が作られ、同14年ごろまでに「大黒」や「ムキ栗」などに代表される黒楽が成立したと推定しています。京都・大山崎に天正10年に利休が建設し、わずか2畳の空間で秀吉に茶を献じたという国宝の茶室待庵が残っています。吉左衞門さんはこの土壁の塗り回しなどに、「ムキ栗」や「大黒」に通じる気分を感じると、日本陶磁協会の森孝一さんのインタビュー(雑誌『陶説534号』収録、1997年9月刊)で語っています。茶碗の見込みと茶室の空間処理が、同じというのです。「長次郎を見るのならばこの一碗」とは、自著『楽茶碗』(淡交社刊)での「無一物」評。「大黒」については、「これほど深い思想性を負った茶碗は他にはない」と述べています。

 利休と長次郎の出会いの時期や状況を物語る資料は知られていません。樂家の文書に長次郎の父はあめや(飴也・阿免や)、母は比丘尼とあり、中国もしくは朝鮮半島からの渡来人とされていました。昨年5月、中世陶磁研究の第一人者で名古屋大学名誉教授の楢崎彰一氏が、刻銘のある樂美術館所蔵の三彩獅子像(高さ35.5cm)を調査。銘文を「天正二年春 寵命 長次良造之」と確定した上で、白化粧した素地に、鉛を媒熔剤とする緑釉と白釉を施した華南三彩(素三彩)の技法で作られたと、瀬戸市埋蔵文化財センター研究紀要13輯(2006年3月刊)で報告しています。楢崎氏は「あめや」についても、中国・福建省の●(●は「もんがまえ」に虫、びん)南語地域などで用いられる呼び掛け、「おいおい米さんよ」だった可能性を示唆。「阿米夜」の字をあてています。これで中国南部出身説が有力となったのは間違いないでしょう。嬉しいことに、この獅子も第二室に展示されています。

 獅子や茶碗を始めとする楽焼は、考古学者たちの言う軟質施釉陶器の範疇に含まれます。近年の発掘で、大阪や堺、京都などの16世紀末から17世紀にかけての遺跡から、このタイプの様々な陶器が出土しています。今回、陶片の一部が参考展示されていますが、中には中国とは逆回転の轆轤を用いた製品もあり、華南三彩の技術が日本在来の製陶技法と結び付いて幅広く展開して行った様子が明らかになりつつあります。

 樂吉左衞門さんは、展覧会の開会挨拶で「樂茶碗には、当初から完成形が存在しました。あとに続く者にとって、これは大変なことなんです」と語りました。歴代の作を眺めて、その辺りに思いを巡らすのも一興でしょう。3代道入(1599―1656)の時代に新たな傾向、すなわち表現豊かで軽妙な作行きと釉による装飾が始まったようです。黒楽茶碗 銘「山ノ端」は、その一例。林屋晴三氏は著書『和物茶碗』(至文堂・日本の美術5)で、本阿弥光悦(1558―1637)の影響によると説明しています。

 当代は14代覚入(1918―80)の長男で、東京芸大彫刻科を卒業後、ローマのアカデミアで学びました。1990年、東京・虎ノ門の菊池ゲストハウスで開いた個展「天問」での衝撃的デビューはよく覚えています。黒楽茶碗(高さ10.4cm、口径12.2―10.5cm)は2005年の近作。日々新たな創造の地平に挑み続けているのは、頼もしい限りです。


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