<< 「津軽金山焼」の紹介本が完成 | main | タヌキの多彩な魅力語り合う >>

スポンサーサイト

  • 2007.09.25 Tuesday
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

一定期間更新がないため広告を表示しています


小さきもの みな 美し

― 展覧会から ―

2007年05月27日

 6月10日(日)まで、滋賀県甲賀市信楽町のMIHO MUSEUMで開催中。問い合わせはTel 0748−82−3411、http://miho.jp

豹を背負う女性像(紀元前12世紀ごろ、エジプト)
乾山オランダ写市松文猪口(18世紀、尾形乾山作)、越田悟全撮影
備前瓢形徳利 銘くくり猿(17世紀、益田鈍翁旧蔵)
水滴(8―12世紀)
万暦赤絵小丸香合(16−17世紀、中国)

 五胡十六国時代から北朝、隋までの石造仏や金銅仏を集めた展覧会「中国・山東省の仏像」(6月10日まで開催)で賑わうMIHO MUSEUM。北館の一角で、創立者小山美秀子さん(1910−2003)が集めた、可愛らしい小品ばかりの展観が、ひっそりと開かれていました。これも開館10周年を記念する特別展。小山さんは堂々たる名品の収集で有名ですが、小さな品も大好きだったようです。好みやセンスの良し悪しは、見所のある小物の集め方に端的に表れます。絵画や染織、漆器、金属器も含めた内外の120余点から、古美術を愛しむ、厳しい眼を感じました。


 古代エジプトのファイアンス、豹を背負う女性像(紀元前12世紀ごろ、高7.8cm)は、6年前にMIHO MUSEUMで開催された古代ガラス展でお目見えし、特異で魅力的な造形に注目が集まりました。豹の重みに耐えつつ、一途な面持ちで歩む、前屈みの女性。ひと目で尋常ならざる人物と見て取れます。一体、何者なのか。着衣に見られる豹と同じ褐色の斑点から、文字と測量の女神セシャト(Seshat)との見方が有力。豹の毛皮を纏(まと)って王の儀式を手助けする姿などが、神殿の浮き彫りで残っているそうですが、担いだ像は他に知られておらず、意味は分かっていません。93年7月3日、ロンドン・クリスティーズでのテル・ネブ(Ter−neb)・コレクション売り立てで、古美術商の堀内紀良さん(1944―)が落札。小山さんが収集に加えた品だそうです。ファイアンスとは、外見はガラスに似ていますが、れっきとしたやきものの一種。岩石や砂漠の砂に含まれる石英や貝殻などの酸化カルシウム、植物の灰などのカリウム等々、ガラスとほぼ同じ成分を練り合わせて成形し、乾燥、焼成します。溶かした原料から直接成形するガラスとは、作り方が違うのです。


 堀内さんは、MIHOのコレクション形成に重要な役割を果たした人物。小山さんは、熱海のMOA美術館の基礎を作った世界救世教の創始者岡田茂吉氏(1882―1955)の下で学び、岡田氏が亡くなったあと、独立して神慈秀明会を組織しました。堀内さんはある時、往時を知る美術関係者からこう言われたそうです。「秀明会主の小山さんは女性だが強い人で、目も確か。度胸もあるから、あなたと気が合うかも知れない。一度会ってみるといい」


 それから13年が過ぎた91年初頭に小山さんから堀内さんに突然連絡があり、こう告げられたそうです。美術館を建てる積りで、I.M.ペイ氏に設計を頼んだら、国際的にも第一級の施設にするなら引き受けましょうと、条件が付いた。そのために世界の一流品集めに協力して欲しい、と。ペイ氏は、ルーブル美術館新館のピラミッドや、ワシントン・ナショナルギャラリー東館の設計で知られる世界的建築家です。


 協力を約すに際して、堀内さんが求めた条件がふるっています。収集過程で真贋の間違いが起きたら、自分が責任を取るので、あらかじめそれを了解して欲しい、と言うのです。「いいでしょう」のひと言で話し合い成立。小山さんの懐の深さを示すエピソードでしょう。堀内さんは小山さんと長女弘子さん(1940―)を伴い、その後6年近くにわたって年3―4回ずつ、作品探しでアメリカやヨーロッパなどに出向いたそうです。


 小山さんは全く外国語を話しませんでしたが、態度に不思議な威厳があり、メトロポリタンなど著名な美術館の学芸員らからも、自然に一目置かれたそうです。直感が鋭く、知識よりも感覚で即決するタイプ。堀内さんの薦めに、「ああきれいだねえ」の返事が、購入OKの意味だったそうです。僅かな期間で、エジプトからメソポタミア、中国美術と、文字通り世界を股に掛けての名品探し。当然、真贋を巡る際どい局面もあったようですが、堀内さんへの信頼は揺るがなかったそうです。「最初に、私の気持ちを正直に伝えたら、分かってもらえました。普通のコレクターとの関係では、まずあり得ない話です」と堀内さん。余人には測りがたい、不思議な絆と言うべきかも知れません。


 海外に出掛ける以前から、小山さんは瀬津伊之助、藪本荘四郎氏ら名だたる美術商と親交があり、約40年にわたって、茶道具や仏教関連の日本美術などを収集していました。東大寺管長だった上司海雲(1906―75)や、染色工芸家芹沢●介(1895―1984)、画家の須田剋太(1906―90) 、写真家入江泰吉(1905―92)ら親しい文化人とも、しばしば骨董談義を楽しんだそうです。


 乾山オランダ写市松文猪口(18世紀、高4.5cm)も、あるいはそんな交流の中で出合った品でしょうか。初代尾形乾山(1663―1743)は革新的な京焼の陶工として有名ですが、これは恐らく二代(生没年不詳)の作でしょう。陶胎で、口縁には淡く黄色が塗ってあります。器底には、鉄絵具の「乾山」銘と花押(かおう)。箱蓋表に「延享二(1745)年 亀江戸 乾山角猪口 枚弐拾」の年記。これは初代が没して2年後に当たります。オランダ写しとあるからには、本歌はデルフト焼のはずです。17世紀末のデルフトとされる大和文華館所蔵、藍絵石畳文鉢を思い起こす方もあるかも知れません。ところがオランダでのこの手の遺例はほぼ皆無らしく、日本からの特注品だった可能性が考えられます。さらに面倒なのは、景徳鎮で明代天啓(1621―27)、崇禎(1628―44)年間に作られた古染付の湯呑や、1640―50年ごろの伊万里手塩皿などにも、同じ文様が登場するのです。古染付の多くが、日本からの注文品だったのは、周知の事実。本歌の本歌は、はたして日中蘭のいずれなのか。厄介なこの問題はひとまず置くとして、この猪口が、群を抜いて瀟洒で、美しいのは間違いありません。


 鈍翁益田孝(1848―1938)旧蔵の備前瓢形徳利 銘くくり猿(17世紀、高11.9cm)の破格な造形には、桃山の雰囲気が感じられます。瀬津伊之助氏の次男で東京・日本橋の瀬津雅陶堂店主だった巌氏(1937―2000)を通じて、1980年にコレクションに加わった品。ひょうげた味わいは独特で、練達の陶工の手になった稀な品に違いありません。箱の銘「くく里猿」が、鈍翁自身の命名か否かは不明。猿回しのサルがうずくまる姿、あるいは京都・八坂庚申堂などのお守り人形からの連想かも知れません。


 平安時代の水滴(8―12世紀、高6.5cm)を、ガラスケース越しに見た愛知県陶磁資料館の井上喜久男・学芸課長は、9世紀半ばから後半に猿投窯で焼かれた燻べ焼きしていない白地の瓷器(しき)ではないか、と印象を語ってくれました。猿投の器に注口が見られるのは、9世紀前半まで。背が低く、下膨れのふっくらした器形はこれよりやや後の時代の特徴で、両者の中間の時期を考えざるを得ないのだそうです。注口は、多面体状に平たく面取りされています。これは晩唐から五代にかけての越州窯や長沙窯の水注などによくある形。類例のない、可憐な器と言うほかありません。筆者は、比叡山の経塚から景徳鎮製の青白磁合子とともに出土したとされる、11世紀のガラス注器を思い浮かべました。


 器面いっぱいに呉須で、皇帝の象徴とされる五爪の龍を描いた万暦赤絵小丸香合(16―17世紀、径3.3cm)も、まさしく珍品。似た品を見た記憶がありません。呉須で記した「大明萬暦年製」の底銘からも、官窯作と分かります。上絵の赤、黄、緑の発色も見事です。どのような経緯で日本に伝わったのか、興味は尽きません。


 一巡して特に目に付いた品に限って紹介しましたが、小山さんの小品コレクションには、類のない、美しい品々が、まだまだ隠れていそうです。いつまでも眺めていたい思いを残して、会場を去りました。


●=金へんに圭



元ネタ

スポンサーサイト

  • 2007.09.25 Tuesday
  • -
  • 14:39
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
神慈秀明会の被害者のひとりですが、こういう記事を見ると心が痛みます。残念ながら、この会は全くすばらしいと思いません。
いかに詐欺的,k恐喝的な方法でお金を集め、現在もどういう運営をしているか…。
このような団体がのうのうとしていられるのには、ほんとに頭がいたいです。
  • tokumei
  • 2007/07/07 3:40 AM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
  • -
  • 2008/05/04 8:15 PM
calendar
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2018 >>
sponsored links
selected entries
categories
archives
recent comment
recent trackback
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM